Sin

「ただいま戻りましたー」

看護師に車椅子を押してもらってシンが散歩から帰ってきた。

ジャックの顔を見て、シンは嬉しそうに腕を振る。

不器用に指差す膝掛けの上には白い花びら。シンが生まれて十二回目の林檎の花だ。

「シン君、裏手にある林檎の木が気に入ったみたいで遅くなっちゃいました」

爽やかに笑う看護師はジャックを見て、少し驚いたように目を見開いた。

「……先生?」

ジャックはシンへ向けた視線を看護師へと移す。

色白で背の高い青年。優しい目元はどこかで見た事があるような無いような。

誰だろう、とジャックが記憶を辿っていると看護師はにこっと微笑んだ。

「シン君の名前見た時からそうかなって思ってたんですけど、やっぱりそうだ。ウェイド先生ですよね?」

「は、はいそうですが」

「僕です、アレクセイです。小学生の時先生に助けていただいた」

アレクセイと聞いてジャックの記憶が繋がった。そうだ、見覚えのある目元、色白の肌。間違いない。

教育実習の時出会った、虐待を受けていた少年だ。