「今看護師と散歩に行っています。もうすぐ帰ってくると思うので掛けてお待ち下さい」
約束の時間より少し早く病院に着いたジャックと店主を、シンを受け入れてくれた医師は笑顔で迎えた。
「今だから言える事ですが、シン君が助かるとは思いませんでした。正直、手遅れだろうと諦めていました」
正直な医師の言葉に店主は少し苦い表情を見せる。医師は、彼がルージャの子だからではなくと付け加えた。
「しかしあの時丁度友人が来ていましてね。腕利きの外科医なんですが、その彼に一喝されました。『助かる可能性が一パーセントでもあるなら見捨てるな』と」
ジャックは鋭い目をした金髪の医師の事を思い出した。彼は助手ではなく外科医だったのか。
「彼の国と私達の国では法律が違うので、本来なら彼がこの国で執刀してはいけないんですがね。彼は守るべきなのは法律より命だろうと言ってシン君の手術をしてくれたんです」
そうだったんですか、とジャックは驚いたように呟く。
『中途半端に助けるのは残酷です』
『自分を犠牲にする覚悟が本当にあるんですか』
『親になる事は命を預かる事と似ていると私は思います』
『だから、ただ確かめたかったのです』
法律を、そして自分の身を守る事より、小さな命を救う事を選んでくれた他国の医者。
あのきつい言動は彼が命を大切に思っているからこそ。真剣だからこそのものだったのだろう。
「彼でなければ、きっとシン君は助かりませんでした」



