Sin

「これ以上の回復は見込めません」

医師はその事実をジャックにだけ告げた。シンは話せるようにはならず、歩けるようにもならない、と。

それを知らず、シンは毎日リハビリに励んでいる。ジャックが来ると嬉しそうに瞬きし、成果を見てほしくて不自由な腕を動かして見せる。

「シンは頑張り屋だな」

そう言って頭を撫でるとシンは得意そうに目を細くしてジャックを見つめた。


それでも辛い時はあるのだろう。時々、シンは一日中泣いている事があった。

そんな彼の姿を見ていて、ジャックはふと不安になった。

どんな障害が遺ろうとシンを支えて行くと決めた。その気持ちは少しも変わっていない。

……ただ。

シンは今までに散々幸せを奪われてきた。

さらに今回の傷が原因で体の自由も言葉も奪われ、もしかしたらなりたいと願っていた夢も失ったかもしれない。

その状態で生きて、シンは本当に幸せなのだろうか。

例えどんな状態になろうとシンに生きていて欲しかった。生きてさえくれればと願った。

でもそれはただ、遺される者のエゴでしかなかったのだろうか……。



『彼が頑張っているのは、もう一度あなたに会いたいからなのかもしれませんね』

あの時の医師の言葉を思い出して不安を追いやり、ジャックはシンを迎えに行く支度を始めた。