Sin

「せーんせー!!」

廊下をパタパタと走る音が聞こえ、十歳くらいの元気な女の子がジャックを呼び止めた。

「これ、先生が貸してくれたハンカチ。ちゃんと洗っといたからね」

「ありがとう、ロージー」

ジャックは彼女に手渡されたチャコールグレーのハンカチを受け取りポケットにしまう。

「ね、先生。そのハンカチ恋人からもらったの?」

ロージーはジャックの手を掴んでぶんぶんと振りながら尋ねた。赤いリボンで結んだポニーテールがかわいらしく揺れる。

「どうして?」

「だって『ありがとう、大好き』って書いてあるでしょ? みんなで恋人からのプレゼントだねって話してたの」

こういうおしゃまな所はやはり女の子だからか。

どんな人? と興味津々の様子で問うロージーに、ジャックは笑いながら答えた。

「残念だけど恋人じゃなくてね。先生の子どもがお父さんにってくれた、宝物なんだ」