Sin

瞬間、ジャックの表情が強張った。

「犯人はまだ捕まって居ないようです。……いや捕まえる気がないのかも知れませんが」

「そうですか」

「国内で、ルージャ移民への反感や悪感情が今まで以上に強くなってきている気がします。この辺りは田舎とは言え、全く危険が無いとは言えません。しばらく……騒ぎが収まるまでの間だけでも、シン君を外出させない方がいいかと」

余計なお世話かもしれませんが、と彼は付け加える。

「とんでもない。教えて下さってありがとうございます」

ジャックは礼を言い、ふと表情を緩めた。

「……嬉しいですね。もうここに来ていないのにこうしてシンの事を案じて下さる事が」

施設長は寂しそうに笑い、窓の外に目をやった。

街灯の明かりに照らされている花開いた林檎の木を見つめて深い息をつく。

「ただ案じる事しか出来ない現実が悔しいですよ。シン君が私達の事を心配してくれて、自分から身をひいてくれた事に気づいていましたから」

「そうでしたか」

ジャックも窓の外に目を向けた。晴れの日が続いたからか、満開の花だ。

シンが生まれてから十一回目の林檎の花。今年、彼は十一歳になる。

「一日も早く、シン君が――誰もが自由に生きられる国になるよう願っています」