Sin

いっそ、何もかも忘れて許せたら。全てを水に流して愛せたら。

そうしたらこの苦しさから解放されるのだろうか。

「は、はは……」

ジャックは低く笑った。

開き直る事も必要なんて偉そうに言っておきながら、現実に縛り付けられてるのは自分じゃないか。

3.14で線を引く“円周率”。前へ進むために仕方ないと割り切る“現実”。

しかし、“感情”は簡単に四捨五入する事が出来ない。




足音を忍ばせてソファーに戻る。ふと、本棚に置かれた封筒が目に入った。

手を伸ばして裏返す。いつもと同じ差出人。

ぐしゃりと乱暴に握り潰し、ジャックは手紙をごみ箱に投げ入れた。

部屋に残る甘い匂いが、消せない苦さを余計に苦く感じさせた。