Sin

返事をしてくれない店主に近づき、シンはポケットに入っている1リア硬貨を差し出した。

「林檎、盗んでごめんなさい」

深く頭を下げる。叩かれるかも、と目をつぶったが少し待っても衝撃は来なかった。

「ジャックが……じゃない、一緒に住んでる先生がお小遣くれたから、少しずつだけど、盗んだ林檎のお金、払います」

本当にごめんなさい。

そう言ってシンは恐る恐る店主を見上げた。怒っているようでもあり、何かを考えているようでもあり。

沈黙が怖くて、シンは目を逸らすために俯いた。

苦い表情をしていた店主は唸るようなため息をつく。彼は口を閉ざしたまま、シンをじろりと観察した。

大きな灰色の瞳に攻撃的な色は全く無い。万引きしに来ていた時の“狂犬”の面影もない。

こんなに小さな子だったのか。思っていたよりも幼いシンの顔に店主は軽く驚きを感じた。

「本当に、ごめんなさい」

泣きそうな声。

ここに来るのは怖かったはずだ。それでもこうして来たのは、恐らく本気で後悔しているからなのだろう。

店主はシンに一歩近づく。

1リア硬貨を差し出しているシンの小さな手は震えていた。