Sin

見慣れた景色が近付く。

シンは帽子を深く被った。出来る事なら俺だとばれませんように。祈るような気持ちで歩を進める。

この商店街に迷い込んだ時、初めは残飯を盗んでいた。食べられる物ならなんでもよかった。

日中は潰れた商店の倉庫で眠り、夜になるとゴミ置場を漁った。それで十分だった。食べられさえすれば。

でも、八百屋の店先に林檎を見つけた時、我慢出来なくなった。

赤い林檎。母さんがくれた、ご褒美。無意識に求めている欲しくて欲しくてたまらない愛情を思い出させるそれに、つい魔がさした。

一度成功すると罪の意識を感じなくなった。何をしてもどうせ俺はゴミなんだから。人を殺す訳じゃ無し、万引きくらいどうって事ない。そう思い、盗みを繰り返した。

そのうち、店主に万引きが見つかった。それでも止められなかった。シンにとって林檎は特別な物だった。


そしてあの日、ジャックに会ったんだ。

あれから幾つ彼に林檎をもらったんだろう。

シンは自分の少し先を歩くジャックの手をぎゅっと強く握った。