Sin

綺麗事、か。ジャックは苦笑した。

一体、いつからこの世界は“真実”が“綺麗事”になってしまうほど歪んでしまったのだろう。

「綺麗事……かも知れないな」

ジャックは立ち上がり、向かい側にいるシンのそばに寄った。肩に手を乗せ、一緒にソファーへ向かう。

隣に座ったシンの小さな肩に腕をまわし、ジャックは独り言のように呟いた。

「ただ、僕はそう信じてる」

シンは深く俯き、黙っていた。長めの黒い銀髪が表情をすっかり隠している。

『シンは一人の人間として大切』

ジャックの温かい手がそっと頭を撫でる。シンはセイジ達がくれた手紙を思い出した。

『早く良くなってね』

『食べられないと聞いて心配です。元気になったら遊びに来てね』

不安と葛藤が胸の中をぐるぐる回る。それを鎮めていく3.14の数字とジャックの手の温もり。


長い沈黙の間、ジャックはずっとシンの隣にいた。