Sin

「……似ていると思わないか」

「え?」

不意に問い掛けられ顔をあげたシンに、ジャックは穏やかな声で言った。

「生きていると必ず、どこまでいっても答えが見えない疑問や、自分ではどうすることも出来ない現実にぶつかる」

「現、実……?」

ぽつりと反すうするシンに頷き、ジャックは紙に幾つかの式を書き付ける。

「6をある数字で割ろうとする時、答えを2にしたければ3で割ればいい。答えを3にしたければ2で割ればいい。こんな風に、よく考えて自分の努力で何とか出来る事もある。でも」

ジャックは手を伸ばし、シンの頬に残る涙の跡をそっと拭って微笑みかけた。

「シンがルージャの血を引いてる事や、この国でルージャの人間に対する偏見がまかり通っている事。……全部、シン自身にはどうする事も出来ない事だろう?」

シンは小さく頷く。瞬きした目からもう一滴涙が落ちる。

「無限に続く円周率に3.14で線を引かないといつまで経っても計算が出来ない。同じように、」

ジャックは赤いペンで小数点第二位の所にぐいと線を引いた。

「生きづらい現実を生き抜いていてくためには線を引く――“仕方ない”と開き直る事も必要なんだ」