Sin

「そういやさ、これなんて読むんだ?」

シンはドリルの端に書いた字を見せてジャックに尋ねた。

「ナディア、だ。人の名前だな」

「じゃあこれは?」

もう一度よたよたとアルファベットが並ぶ。

「それはセイジ。どうかしたのか?」

「こないだ手紙もらった」

シンはジャックと目を合わせずに答える。

「だからどうって事ないけど。ただ、読めなかったから」

ただ、それだけ。

無愛想にそう繰り返し、シンは単語練習に戻った。


カリカリと鉛筆が紙の上を行き来する音と時計の音だけが静かな部屋に響く。

無言で単語を書き連ねるシンを見つめながら、ジャックはこっそり溜息をついた。