…え? 来ると覚悟していた 痛みはいつまでたっても 伝わってこない。 そっと目を開けると そこには大きな背中。 「オレの彼女に 何やってんの」 「み、南…」 あたしが消え入りそうな 声で言うと 南はこちらに振り返り まるで壊れ物を 扱うように優しく、 でもしっかりと あたしを抱きしめた。 「杏…。 大丈夫か?」 南の胸の暖かさに あたしは安心したように フッと力が抜けた。 南はあたしの背中を ポンポンとたたくと、 そのままあたしを かばうように 抱きしめながら 湊さんに向き直った。