吸血鬼と紅き石

パシリ。


ほんの僅かだが、空間に亀裂が走った。

空間を破壊しようとする、女の力のせいではない。

外の――――自分達とは別の空間から、だ。

誰か分からないが有難い。

この術を打ち破るきっかけをくれた。

女もそれを感じ取ったのだろう、浮かべていたうっとりした、勝ち誇った笑みが、驚愕のそれに変わる。

その一瞬の隙を、好機を捉えたレンバルトが見逃す筈もなく。

勝負は一瞬だった。

ザシュリ、と女の肉体に巨大な剣が突き刺さった。

女を屠る為の、強大にして確実な一撃だった。

「…ああ…」

身体を、中央からまだ破壊されていない暗黒の床に縫いとめられたまま、女が呟く。

「私は…あなたを手に入れることが出来なかったのね…」

諦めのような自嘲のようなその呟きに、レンバルトは静かに言葉を添える。

「…残念ながらそのようだ」