そして、涙が溢れそうになったその時―――



「よいしょ」



「…うわぁっ……!!」



あたしはいきなりお客さんの腕から解放された。


強く掴まれていた腰を押さえながら、あたしは周りを見る。



…ここは、中庭?


中庭は、文化祭では立ち入り禁止になってる場所。


だから、人通りはまったくなかった。



そんな状況が怖くなって、あたしは勇気を振り絞ってお客さんに話しかけることにした。



「あ…あの……」



あたしの声に反応して、こっちを見るお客さん。



…やっぱり見たことある、この人。


でも、どこでなんだろう…。



「やっぱり覚えてないのか、俺のこと」



そう呟いたお客さんは、被っていたフードをそっと脱いだ。



「――――っ…!!」



「久しぶりだね、光里ちゃん」




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