村を出た時にすでに落ちかけていた陽が完全に落ちて、空が黒檀に染まろうという頃。
 
 街道から少し外れた丘に小さな教会らしき建物を見つけ、すがる思いで私は教会のドアを叩いた。

「はい。どうされましたか――!?」

 中から質素な黒い服で身を包んだ若い牧師が顔を出し、私の姿を見た瞬間驚いて声をあげた。

「大丈夫ですか!? その血は……」

「これは私の血じゃない。私は大丈夫! それよりもこの子を……!!」

 私は牧師の声をさえぎり、腕の中の子供を見せる。

 牧師は驚いた表情はそのままに、しかし負傷した子供を見ると、すぐに中へ入れてくれた。

 そして真っ直ぐに教会の奥にある小さな部屋に私たちを案内すると、そこにあるベッドに子供を寝かせ、お湯を用意して傷口を洗い消毒をし、手際よく応急処置をしてくれた。

「大丈夫ですよ。見たところ弾は貫通しているようですし、他に大きな傷は見当たりませんでしたよ」