「さ、食べて、ルーシー。今日で十六歳ね」

 いつものように祈りを捧げたあと、手にしていた小さなロザリオをテーブルに置くと、母はそう言って微笑み、料理を皿に取り分けはじめた。

「わぁ……おいしそう」

 まだ幼い弟の顔がほころぶ。

「良かったね、レン。今日はご馳走だ」

「うん。わ、見て。お肉入ってる」

 レンは皿に注がれたシチューに入っている僅かな肉を目ざとく見つけて、青くて丸い瞳をクルクルとさせて歓声を上げた。

 テーブルに並べられたのは、小麦を水で練って焼いた薄いパン。

 数種類の豆を甘辛く煮たデザート。イモとタマネギ、そして随分久しく見なかった、鳥の肉が煮込まれたシチュー。

「母さん、こんなに大丈夫なの?」

「昔着てたドレスを売ったの、当分いらないでしょう? 誕生日くらいおいしいもの食べなきゃ」