「祈りなんて……何にもならない。私は神なんて信じない」
「ふむ……よろしい」
吐き捨てるように投げつけた返答にも関わらず、軍服の男は何故か満足げに笑う。
「敵が憎いか?」
「あたりまえだ」
「そうか、ならば私が力を貸そう」
「え……?」
突然の、予想だにしない申し出に、一瞬私は眉をひそめ男を見上げる。
だがそんな私にかまうことなく男は続けた。
「君に、力をあげよう。復讐のための力を」
男の言う意味は全く理解できなかったが、それでもその申し出は私にとっては少なくとも神父が捧げる祈りよりも遥かに強く心揺さぶるものだった。
復讐という一言は暗く、だが魅惑的な響きで私の胸の深部へと入り込む。