私のところにも神父は来たが、例の言葉を吐きつづける私に、悲しい哀れみの視線を投げかけ、首を横にふって部屋を後にした。

「あの子の闇は深い、しばらく時間が必要です」

 神父は部屋の前に立って待っていた看守にそう告げて私の部屋を出て行った。

「慈しみに富みし父よ。我らが人を許すごとく、我らの罪を許し給え。我らを試みより守りたまえ、我らを悪より救い給え。アーメン」

 今日もどこの部屋からか、祈りの声が聞こえる。

(祈ったからといってどうなるという……)

 祈りをきくたびに、私は母を思い出し、やるせない怒りに満たされた。

 母は、信心深いひとだった。毎日祈りを欠かさず、毎週教会に通い、父の訃報の後も、神を愛し信じてやまず……