退院の日が来た。


智哉と彼女が迎えに来てくれた。


相変わらず、俺の記憶は戻らない。
でも、これを受け入れて生活するしかない。



ロビーで、お世話になった先生と看護師さんに挨拶をしていると、
ふと、イヤな感じの視線を感じた。



吹き抜けの2階に顔を上げると…



俺にとって迷惑な存在だった、あのイケメン医師が俺を見下ろしていた。



しばらく視線を合わせていたが、
あっちが先に反らし、
踵を返して去っていった。


「どうしたの?」



俺がロビーから玄関に来ないので、彼女が呼びにきた。



「いや、何でもないよ。行こう」



智哉の車に乗り、俺のアパートまで向かった。