彼女と共に1階のリビングに降りると、


先ほどまで興奮していた永沢が幾分落ち着いた様子でソファーに座っていた。



「准くん、待たせてゴメンなさい…」



「あぁ…」



永沢に対峙するように俺と彼女はソファーに座った。


「准くん…
私は、お父様の希望通り、准くんと婚約するわ…

今日のことは…
私の一存で、啓人さんにお願いしたの…
だから、啓人さんを責めたりしないで…お願い…」


彼女は真剣な眼差しで永沢に懇願する


「わかった…
但し…もう二度とコイツと会わない、と約束してくれ…」


永沢も彼女の真剣さを受け止めた


「…えぇ…わかったわ…」



「じゃあ、俺は帰る、今日の夜の食事会、忘れずにな」


俺を一度も見ないで、
永沢は、佐戸田家を後にした。


2人の会話を聞いてるしかない自分と
想像しきれない名家の壁に、
俺の力など到底敵わぬ大きな苛立ちを覚えた。