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レナちゃんの緑のリストバンドの下がどうなっているか、私は実際に見たわけじゃないから、わからない。けれど、そのリストバンドがなにを隠しているかは、よく知ってる。
レナちゃんの作り出した偽りの弱さが、そこには刻まれている。
私は、彼女の自傷行為を見過ごせなかった。けれど私ではやめさせることができないから、裁縫部の壮馬くんに依頼した。私も、もとを糺せば裁縫部だったというのと、彼とは中学時代からの馴染みもあって、そのツテだ。
テディベアなどのぬいぐるみから、演劇部の衣装なども手がける裁縫部の活動は、本当は、人の心の傷を縫合して癒すこと。もちろん、後者の目的は公じゃない。
私も、一応は裁縫部。でも今となってはもう、幽霊部員だ。もともと入りたくて入ったわけじゃない。壮馬くんとユウちゃんに、中学時代のよしみとして引きずり込まれた。
私と壮馬くんとユウちゃんは、同中だ。だから彼と彼女は私の中学校時代を知っている。
「小百合、お前の傷はもう、癒えたのか――?」
そう、ことあるごとに訊ねてくるのは、裁縫部の部長を務める壮馬くん。一年生にしてすでに部長なのは、裁縫部が、私と彼とユウちゃんの三人しかいないからだ。この学校はそこまで生徒の数が多くないから、三人以上生徒が集まれば、部として承認される。壮馬くんの裁縫技術に定評がある、というのも、認められている理由のひとつ。
私は、彼の繰り返すあの質問が、嫌いだ。
なぜって。
私の傷は癒えることがないから。癒してはならないから。癒えては、ならない傷だから。
レナちゃんの緑のリストバンドの下がどうなっているか、私は実際に見たわけじゃないから、わからない。けれど、そのリストバンドがなにを隠しているかは、よく知ってる。
レナちゃんの作り出した偽りの弱さが、そこには刻まれている。
私は、彼女の自傷行為を見過ごせなかった。けれど私ではやめさせることができないから、裁縫部の壮馬くんに依頼した。私も、もとを糺せば裁縫部だったというのと、彼とは中学時代からの馴染みもあって、そのツテだ。
テディベアなどのぬいぐるみから、演劇部の衣装なども手がける裁縫部の活動は、本当は、人の心の傷を縫合して癒すこと。もちろん、後者の目的は公じゃない。
私も、一応は裁縫部。でも今となってはもう、幽霊部員だ。もともと入りたくて入ったわけじゃない。壮馬くんとユウちゃんに、中学時代のよしみとして引きずり込まれた。
私と壮馬くんとユウちゃんは、同中だ。だから彼と彼女は私の中学校時代を知っている。
「小百合、お前の傷はもう、癒えたのか――?」
そう、ことあるごとに訊ねてくるのは、裁縫部の部長を務める壮馬くん。一年生にしてすでに部長なのは、裁縫部が、私と彼とユウちゃんの三人しかいないからだ。この学校はそこまで生徒の数が多くないから、三人以上生徒が集まれば、部として承認される。壮馬くんの裁縫技術に定評がある、というのも、認められている理由のひとつ。
私は、彼の繰り返すあの質問が、嫌いだ。
なぜって。
私の傷は癒えることがないから。癒してはならないから。癒えては、ならない傷だから。

