「ご免下さい、若葉企画のものです」 「は~い」 店の奥から透き通った品のある声。 暖簾を潜り、藤色の着物を着た女将さんが顔を出して来た。 「太田さん、ごめんなさいね。突然お呼び立てしてしまって」 「いえ(笑) 今日は、新作でも出来たのですか?」 「まぁ、掛けてちょうだい。立ち話もなんでしょう」 「すみません」 女将さんに促され、店先の赤い布が掛けられた長椅子に座る。 此処、皐月製菓店は小さな和菓子屋。