誰よりも巧く『輝神』を扱えると知れた日から、生きているほとんどの時間をこの【カグヤ】のコックピットで過ごしてきた。

 その時間は大好きな透明と過ごした時間より、あの奇妙な人間たちと過ごした時間より、遙かに長い。

 無色にとって【カグヤ】は愛機であると同時に帰るべき家でもあり、自分の一部であった。

「SAMFの新島無色大尉、目的地上空に到着した」

 通信を入れ、無色はモニターを近接戦闘用の*光学全方位モードに切り替える。

 たちまちコックピットの壁が、前後左右三百六十度全て、周囲を映し出す画面となった。
 まるで壁が消失し、何もない空の上に座席だけが浮いているかのような錯覚に陥る。

 眼下に黒々とした海と、そして見慣れた小さな島が見えた。

 あの島だ。
 無色の大切な人がいる、あの島だ。

「くそっ」
 無色は小さく毒づいて、レーダーで周囲を探った。

「──あれか」
 島に向かって飛ぶ機影を捉え、無色は機体をその敵機へと向ける。