「でも、撃ってきてる!」
 ウミと呼ばれた少女が、後ろの席から悲鳴に近い声で言う。

「あれ──あれ、軍の戦闘機だよ!」

「落ち着け、威嚇だ。いきなり当ててきたりするもんか」
 彼女に──というよりは、自分自身に言い聞かせるために、クウは呟いた。

 落ち着け、落ち着け──ちくしょう、何でこうなった。

 視界には素晴らしい眺め。

 気分はどん底。

『繰り返します。これは最終警告です』

 ついでに状況も最悪だ。

「最終警告って言ってるよっ!?」
 後ろでウミが、今度こそ本当の悲鳴を上げた。

『ここは飛行禁止区域です、直ちに誘導に従って引き返しなさい』

「くそ、できるならとっくに引き返してるっつうの!」
 毒づきながら、クウは何とか機体を操ろうと試みる。

 だがただの棒であるかの如く、操縦桿からは何の手応えも返ってこない。

『この警告を無視すれば撃墜します』