「お姉ちゃん、おっそーい」
 待ち合わせの場所では、長い髪の少女と、少し目つきの鋭い三白眼の少年が待っていた。
 私服ではあるが、二人とも高校生くらいだろう。

「おっせえですよ」
「悪い悪い」
 口を尖らせる少年に、若者が謝る。

「あっれー? こんなとこで何やってんの?」
 ちょうどこの時、横から四人のいる場所にセーラー服姿の少女が走り寄ってきた。

「うげっ? お前が住んでんの隣町じゃん。何でここいんの?」
「ちょっと用事があってさ。なになにその子、カノジョ?」

 セーラー服の少女は明るく笑いながら三白眼の少年のほっぺたをつつく。

「ええと、どなたですか?」
 少年の横にいた髪の長い少女が、首を傾げた。

「ああ、こいつは俺のいとこ」
 こんにちはぁ、とセーラー服少女は言って、「なになに? デート?」と二人を見比べた。

「そうそう、ダブルデートなんだよ」
 短髪の少女の横にいる若者が、そう言った。

「うわーいいなあ、あたしも早くカレシ作ろっ」

 少女が言い、四人が笑った。

「そっか、平和ってさ」と、男の子みたいな少女が、彼氏にそっと呟いた。

「こうやって普通に笑えることなんだね」

 大切な人たちに囲まれて、少女はキラキラと笑った。

 ビルの向こうに見える青い空を、飛行機雲が二つに割っていた。







 あなたの笑顔が
 二度と失われぬことを祈って


 -了-