「飛行機は人殺しの道具じゃないって言葉を聞いたときにね、俺は、このピースピースって名前は、この店にぴったりだな、と思ったんだよ」

 無色は看板に視線を移して、死んでしまった彼らを思って唇を噛んだ。

「俺は、ただ夢を追いかけたかっただけなんだ。俺だけじゃない。俺が西で一緒に勉強してきた奴らも、こっちの研究所にいた仲間も、みんな同じだった」

 空気も、羽海も、今度は平和になったときに飛行機を飛ばしたいと言っていたのに。
 そんな思いを踏みにじられたあんな場所で、死んでしまった。

「小説やなんかの影響で、科学者なんて言うと、人間を玩具みたいに考えているように思われるけどね」

 雨鳥は、雨に濡れた砂浜を見渡した。
 むっとするような磯の香りが辺りに満ちている。

「俺は、科学者っていうのはみんな、この世界に何かしらの感動を受けた、この世界が好きな人たちばかりだと思ってる。人を本気で傷つけようって奴は、一人もいないと信じてるよ」

 無色は、雨鳥を見上げた。

「人の命を救いたいなんて大層なこと、俺は考えてなかったけどね、ただ自分や、たくさんの人の夢は、別の人の夢を奪うためのものじゃない」

「だから、空気にデータを渡したんですね」