「晴樹、 何考えてんだ?」 それだけで分かる。 龍慈君も 聞いていたことを。 「大丈夫か?」 龍慈君は優しく 声を掛けてくれる。 頭の中にはさっき 言われた言葉が 何度も繰り返されていた。 『俺と別れよう』 確かに彼は 私にそう告げた。 しかし言った言葉が 分からない。 意味が分からない。 分かりやすいように 彼はもう一度繰り返す。 『別れて欲しい』 こんな時だけ 伝わるように優しく言う。 こういう時だけ 優しくしないでよ。 彼は切なる願いのように 告げて行ってしまった。