右手で頬に触れると、指先が濡れた。


俺、今泣いてんだな。


なんだろう、悲しいとか、そういうんじゃなくて。


いきなり現実を突きつけられて、意味分かんなくて。


なんで、俺が──。


ふと、前の席の方を見ると一際泣いている金髪の後ろ姿が見えた。


震えている背中。


時々聞こえる嗚咽。


もしかして、あれは。


力があまり入らなくなった足をなんとか前に出す。


その人の前に回り込んで顔を確認する。


「莱」


ハンカチを目元を押さえているが、この声、あの唇のカタチ、間違いない。


触れることの出来ない自分の手が憎い。