龍の世界

少年の背後の月は神々しく、まるで彼を守るかのように、世界は彼だけであるかのように、彼だけを照らしている。



そのまま月が連れ去ってしまうのではないかと錯覚する程に…








少年の持つ椿は、男の血により赤黒く染まっている。
それに口付け舐めとる姿は神聖な儀式のようにさえ見える…










残酷なほど美しい姿は、どこか人間離れしていて、常に近寄りがたかった。

なのに何故か惹かれる…






その細い指先が


薄く色付いた唇が


その体すべてが麻薬のように依存性をもたらして、離れさせない…












誰にでもその笑顔を振り撒く彼の特別はただ一人…


金の髪と蒼い瞳のビスクドール…















「君はもう用済みなんだよ……。だって、君じゃ麗しの龍を僕に捧げるには役不足だもの…」

















「さよなら…」








少年はそう言うともう興味がないと言わんばかりに、事切れたその男を瞳に写す事は二度と無かった。