龍の世界





赤い長襦袢は彼の白い肌を際立たせる。


窓枠に片足を上げ、腰掛けると、惜しげもなく白い足が晒された。






葉紅の右手には、不自然に朱く染まった白い椿…









ポタ…




ポタ…













椿から零れる朱














「まったく…君のせいで僕の予定が狂ったじゃないか…」





少年が視線を送る部屋の片隅は、不自然に畳が黒く染まっている…






その黒は、月明かりに照らされると真っ赤な液体となって流れている……













言葉とは裏腹に、ふわりと微笑む。

それだけで、誰もが魅入ってしまうような美貌。

それほど彼は美しく、朱が似合う…









「獲物をじわじわ追い込むのも楽しかったけど、もう待てないんだよ……君は僕の願いを叶えられなかった…。君の立て続けた失敗のせいで、千の桜に集う龍たちは、これから本気で雛を守るだろう……この先やりにくくなったよ……───」










少年はまるで汚いものでも見るようにその男を見た。









指は全て切り取られ、耳は削がれている。

何か堅いもので殴られたらしい体は痛々しく腫れ上がり、その他にも切り傷や火傷…



白いシャツは血で朱く染まり、既に事切れているが、その表情は苦痛に歪み、彼の壮絶な最期を物語っている。