「お前はッッ、いつもそうやって何も求めない!黎雅さんの事もッ、墓地であった事もッ!知りたい筈だろうッ!お前だって!」
幾斗はいつも感情を表には出さない…
なのに今日はその面影は無かった。
ただ本能のままに、感情をぶつける幾斗を見たのは、初めてだった。
それほど、今起きている事が幾斗にとって辛く大きなものなのだろうか……
「幾斗・・・」
私はそっと幾斗の蒼白な頬に手を添えた。
一瞬ビクリと幾斗の体が跳ねたのを見たが、それには触れなかった。
幾斗の揺れる瞳を、下から真っ直ぐ見た。
「私はさ、別に…待ってるわけじゃないよ…」
ゆっくり、語り掛けるように言葉を選びながら話す。
幾斗の瞳からはいつの間にか弱々しい揺らめきは消え、いつもの強い意志の宿った瞳に変わっていた。
「待ってるんじゃない…ただ臆病なだけだよ……」
「怖いの…お兄ちゃんの事知るのも…今私が置かれている状況を知るのも…怖いんだよ…」
「だから私は逃げてるだけ…。それを知ったら、何かが変わっちゃうような気がして……────だから……幾斗が言えないって言った時、いつもホッとしてるの………」
幾斗は私の上から退くが、私は動けないでいた。
顔を隠すため、腕を交差させて目を隠す。
涙が溢れそうなのが分かったから・・・
泣き顔を見られたく無かった・・・

