龍の世界

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お兄ちゃんの四十九日から2週間が経った






朝、部屋を出た私が廊下で出会ったのは、不機嫌丸出しの幾斗。


そしてスーツをきっちり着ていた。




金髪を軽く立てた髪型は変わらないが、黒の細身のスーツを着た姿は、いつもより大人びて見えた



胸元にはシンプルなシルバーのクロス

指には右に2つ、左に1つ指輪をはめ、金髪の合間から、私に対を渡した紅い雫石のピアスが見える。


ジャラジャラし過ぎない、だが存在感が強いアクセがすごく似合っている









「こんな朝早いなんてスッゴク珍しいね」



私はニヤニヤしながら言った。

低血圧の幾斗は、普段は10時過ぎに起きるのに、今は朝の7時半だ。



「仕事だ」


「へぇ。ちゃんと仕事してるんだね。意外・・・」


「同盟の組と食事会なんだよ」


「そっか。頑張ってね」



幾斗は人混みが苦手だ。たくさん人が集まるところを嫌うので、会合などには参加しないそうだ。

どうしてもの時だけは、渋々行くと本人が言っていた。



「・・・お前、ピアス付けてるんだな」


「あぁ、うん。せっかく貰ったし、私あんまりピアス持ってないしね。似合う?」



幾斗の耳とは反対の私の耳に、紅い石が揺れる。




「・・・無くすなよ」


「無くさないよ。ほら、早く行かないと湯川さんに怒られるよ」




私は幾斗を急かして母屋へ移動した。




幾斗は朝ご飯を食べない。

私も朝はココアだけの生活なので幾斗と変わらない。


昼は私は学校なので無理だが、いつも夜は幾斗と一緒にご飯を食べる。



なので今から疲れ切っている幾斗に、苦笑して言った。






「今日はオムライスだから、頑張ってお仕事してきなね」


「分かってる」


「じゃ、行ってきます」



眉間に皴を寄せた幾斗が面白くて、吹き出す前に玄関を出た。