龍の世界





「目、ですか?」


「そう。目だよ」




青年はゆっくりと起き上がる


黒の大輪の花が描かれた艶やかな着物を裸体の上から羽織り、その衣擦れの音だけが部屋に響く。



行為を途中で中断されたにも関わらず、青年を組み敷いていた男はただその様子を眺めていた。













「この、真っ直ぐな、」




少年の細い指が写真の麻綾の頬をスルリと撫でた













「真っ直ぐな、綺麗な宝石みたいな瞳……。これは僕の小鳥には持てない目だ」










陰っていても

その奥には大切に愛されてきた証がある。






「愛情を知っている目だ……でも普通の目じゃないね───」





これは普通に愛されてきた一般人の小娘の目じゃない気がした……














「あいつの目に似てる」


「あいつ・・・?」


「───華やかしき龍」


「華龍、七瀬黎雅ですか。彼女と華龍は実の兄妹です。多少似ているのでは?」


「そうじゃないよ。もっと深い、華龍との繋がり…全ての悲しみを覆い包み、受け入れ、守った男…この子もそんな目をしてる」


「ですが、こんな小娘に」


「いいや…この、深海のように深い……」


「葉紅様・・・」


「やっぱり気に入らないな」






葉紅はその切れ長の目をさらに細めた




瞬間、部屋の空気が冷えた気がする













「あいつも気に入らなかった。僕から小鳥を奪ったんだから。やっと居なくなったと思ったら、次は妹・・・何処までも嫌な血だ」

















待っていなよ、七瀬麻綾










その綺麗な顔が恐怖に染まったとき、あの子はどんな顔するかな・・・───














「連れてきてよ、このお姫様」






「はい・・・───」