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屋敷の門の前で車が停まり、ドアが開けられると出迎えていた人が傘を差してくれた。




「幾斗ッ!麻綾ッ!」




車から降りた私と幾斗に走り寄ってきたのは柳瀬さん。




「柳瀬、さん…」





傘も差さず走って来たせいで、柳瀬さんの色素の薄い髪が顔に張り付いている。








「本当に無事で良かったよ。さあ、中に入って体温めないと。冷えきってるよ」



柳瀬さんは、私と幾斗の肩に手を置いて促した。







屋敷に入り、柳瀬さんは部下の人に呼ばれてしまったため、幾斗と二人きりになった。









「……麻綾」



「何?」





幾斗の声に振り返る。
幾斗は自分の耳に手を伸ばし、何かを差し出してきた。





「手、出せ」


「手?」



言われた通りに差し出すと、ポトッと幾斗の手から何かが落とされる。










「ピアス?・・・」



それは紅い雫石の綺麗なピアス。









「お前にやる」


「でもこれ…」




いつも幾斗が付けていたもの…