初めの頃はそれこそ口での言い合いも、相手の腹を探るような静かで黒々としたものだった。
それがお互い煩わしくなり、だんだん感情をそのままぶつけるようになっていった。
今まで大人しかった私から吐かれる暴言の数々に、若桜さんも驚いていたのを思い出す。
今ではそれも多少収まったものの、やはり毎回の口喧嘩は絶えなかった。
それでも私は毎日病院へ足を運ぶ。
ガチャッ
「またお前か・・・」
「悪かったわね、私で……」
相変わらずの傲慢な態度に、私はこめかみをヒク付かせた。
「ちょっとお二人とも抑えて、抑えて」
「そうですよ、あんまり騒ぐと会頭に怒られますよ?」
そして私達の口喧嘩を止めるのは、周りで見張りと化している組員の方々。
いつも外にしかいないのだが、私達の口喧嘩があまりにもヒートアップすると、こうして止めに入って来る。
「チッ」
「はい、すみません……」
幾斗は機嫌悪そうに舌打ちするが、やはり平の組員と言えど、私にとっては年上の男性。
素直に頭を下げると、彼等は「じゃあ、ごゆっくり」とか言って、部屋から出ていった。
「何ヘコヘコしてんだよ」
「あんたこそ何年上の人に向かって舌打ちしてんのよ。年上は敬うものでしょう」
「あいつらはただの組員だぞ?何で俺があいつらを敬わなきゃなんねーんだよ」
「社会の礼儀でしょうが」
「ここは“裏”の社会なんだよ」
ああ言えばこう言う延々に続く争いはもう挨拶のようなものだ。

