龍の世界

*****


熱から回復した私は、今日も学校へ行き、運転手付きの高級車に乗って帰る。


初めは見張りも兼ねていたこの送迎にもすっかり慣れてきた。




あれから麗龍の病院には行っていない。
誰も強要しないし、会っても、今の私にはどうすればいいのか分からないからだ。




ただ、このまま放置するのも嫌なので、今日の放課後、病院に行くと言ってある。


それを報告したときの、若桜さんの嬉しそうな顔を見てしまえば、後には引けなかった。





「病院に、藤堂さんがいらっしゃいますので、帰りは藤堂さんとお帰りになってください」


「あ、はい。わかりました」



運転手さんにお礼を言って、まだ二回目となる病院に足を踏み入れた








ロビーの隅で、壁にもたれて煙草を吸う藤堂さんを見つけ、駆け寄る
普通にしているだけなのに、やはり極道の人は人目を引く
だが、本人はそんな周りの視線を全く気にしている様子もない




「藤堂さん」


私が声を掛ければ、煙草を消して傍に来る



「お疲れさん」


ポンポンと私の頭を叩いて、そのままポッケに手を入れる




「じゃあ、行くか」


「はい」


「心配しなくても、あの糞ガキは俺等がちゃんと見張ってやっから、安心しろ」





「寧ろ私を見張ってほしい」と思いながらも口にはせず、苦笑を返した。


前と同じ立ち入り禁止区域を進むと、護衛の人たちが藤堂さんに頭を下げる。



「お疲れ様です、藤堂さん」


「おう、お疲れ」



藤堂さんは頭を下げる部下の人達に適当に返事をして、廊下を進む。




病室に近付くに連れ、不安になる。

彼、どんな反応をするだろうか……。


鞄を持つ手をギュッと握り締めた。






病室の前は、相変わらず物々しいのだが、藤堂さんはノックもせずにドアを開けてしまった。






「よぉ、麗龍。自殺してねぇか?」


どんな挨拶だ・・・