龍の世界







「起きられるか?」

「あ、はい」


藤堂さんは私が起き上がるのを手伝い、持っていたブランケットを私の肩に掛けてくれた。

携帯を見ると、もう正午を過ぎている。






「大丈夫か?お前あれから熱出したんだが…」


「熱・・・ですか?」



道理で頭が重いわけだ。動くと痛い。体も怠いし、熱のせいだったようだ。
朝起きたときも頭がぼーっとしたけど、朝よりだいぶ辛い。






「あれから何回か様子見に来たら、どーも息遣いが荒かったからな。まだ下がらないか……」


そう言って藤堂さんは私の額に手を置く。その手がひんやりと冷たく感じたのは、やはり体が火照っているせいだろう。





「何か、さっきより上がったか?」


そう言いながら、何故か藤堂さんの手はそのまま私の膝裏と背中にまわり・・・





「ぅわぁッ!」


抱き上げられた






急な浮遊感に、慌てて藤堂さんの肩を掴む。

藤堂さんは決して体格がいいわけではない。寧ろ湯川さん達と比べれば小柄な方なのに、ひょいっといとも簡単に私を抱き上げた。




「軽いなー。ちゃんと飯食ってんのか?」

「食べてますよ。って言うか下ろして下さい。歩けますから」

「止めとけって、まだ熱あるんだから」

「でも……」

「いいから。ほら、首に手、回せ」


「はい……」



確かに体は辛いので、私は早々にご好意に甘えることにした。














「藤堂さん……。どこ行くんですか?」


「あぁ、会頭んとこ」

「若桜さんのところ、ですか?」

「そ。昨日の事を謝りたいんだと。本当なら自分でお前のとこに来たかったみたいだが、今仕事が大詰めでな」


「でも・・・何で若桜さんが謝るんですか?別に若桜さんが悪いわけじゃ・・・」


「ま、お前と麗龍を会わせようしたのは、会頭だしな。それに、麗龍は会頭が育てたようなもんだから、あいつの粗相は放っておけないんだろ。お前と黎雅みたいなもんだよ」



「そう、なんですか……」