そんな私を見てか、兄に連れられて行ったのは新体操スクール。
可愛らしい練習着も本物のリボンも嬉しくて、夢中で練習した。
ボール
クラブ
フラフープ
リボン
種目の中で、やっぱり一番好きなのはリボン演技。
初めて買ってもらった赤いリボンは、お兄ちゃんが買ってくれた宝物。
もう小さくて使えないけど、まだ大切にとってある。
練習は怪我も多いし、コーチにだって怒られたりしたけど、新体操無しの生活なんて、考えられないくらい没頭した。
何より、私が楽しそうにしていると、お兄ちゃんも笑っていた。
大会で賞を取れば、照れながら、それでもきちんと褒めてくれた。
あの大きな温かい手を私の頭に乗せて……──
そして夢はそこで崩れる
私の頭に置かれたお兄ちゃんの手から赤いものが流れて、目の前は真っ赤に染まる
お兄ちゃんの白いシャツも同様に真っ赤で、温かかった手も、冷たく、重い
『痛い、痛いよ…麻綾』
・・・──ゃ
『俺は殺されたんだ』
・・・─ぁやッ
『生きたかったのに』
・・・あやッ!
(イヤ・・・ッ)
(ヤメテッッ!!!)
「麻綾ッ!!!」
「ッッ!!」
急激に覚醒すれば目に映ったのは、藤堂さん。
「大丈夫か?」
「ハァ、ハァ、藤堂、・・・ハァ、さん……」
呼吸は荒く、身体が怠い。おまけに着ていた服はは汗でぐっしょりしていた
「ずいぶん酷くうなされてた。嫌な夢でも見たか?」
そう言われて思い出す、真っ赤なお兄ちゃんの姿。
「は、い……」
嫌な夢だ……
こんな夢を見るほど、私は今揺れているんだ。
彼の言葉に……
『俺が殺したんだ……』

