「……オイ! オイッテバ!」 誰かが呼んでいるような気がした。 そんな筈はない。 路地の入り口からは大分来ている。 さっき後ろを振り返ったときには人影はなかった。 「オイ! コッチダッテバ! ドンクセーナ!」 今度ははっきりと聞こえた。 そのぶっきらぼうな言い方に、いや、そんなことは関係ない。 とにかく急に呼び止められたことを認識した私は、怖くなり走り出した。