私はろくにすべての経緯を話した。

ろくは目を瞑ったまま、じっと聞いていてくれた。

時折、風がヒゲを揺らし、ヒクヒクと鼻を動かす以外は微動だにしなかった。


「そっかあ……そいつは辛かったな……」


全ての話を聞き終えた後、ろくは顔を洗いながらこう言った。


−ええ、まあ……。

「ん? 違う! 違う! 優子じゃねえよ!」

−航太が……ですか?

「そうだよ、航太。航太のほうだよ!」