ロクは左前足を挙げ、柔らかそうな肉球を見せながら続ける。
「いいかいお嬢ちゃん。おいら達が、時には『猫又』、時には『化け猫』なんて言われて、お前さん達「人」に疎まれるか、何故だかわかるかい?」
−いえ……
「それはなあ、やっぱりおいら達には、そんな能力があるんだよ。「人」はあれだろ? そんな能力ある奴、少ねえだろ?」
−ええ、そうですね。
何の能力だ?
「猫にはなあ、普通にあるんだよ。「人」にはねえから、「人」も調べようとはしねえ。思いもつかねえ能力がある可能性ってのは、ねえ奴には想像もつかねえんだろな!」
ろくは嬉しそうにクリーム色の胸を誇らしげに突き出してそう言った。
スッと差し込んだ日に照らされたろくの毛並みは、キラキラと光の粒子を纏っていた。