ぽき、ぱき、こき、…… 長い指を鳴らすその音に威圧感を存分に含ませ、口の端を僅かに上げて笑う顔には、傾げた首のポーズに似合わない冷めた空気が流れる。 「オマエさぁ、俺のこと覚えてないんだぁ。こないだ思い出しときゃ良かったのになぁー」 押し付けられるように立って壁のコンクリートをひんやりと背中に感じ、怯えを隠しきれない表情の相手から、更に疑問に戸惑う表情を引き出すには充分なセリフだった。