新学期のソワソワした教室のみんなをさらにソワソワさせる者を先生は連れてきた。

みんなに転校生を紹介する、

「浅間子虎君だ。」

そういって現れたのは真っ白な肌と真っ青な瞳を持つ細い少年だった。
おもわず僕は「トラじゃねえだろ、ハスキーだろ!」
と突っ込んでしまった。
僕の言葉にクラス中は大爆笑。
転校生はクラスを静かに出て行った。
その背中には先生の声がこだましていた

オレは神様を知っている。
確かおれが最初に神様に会ったのは小学生のときだった。
神様は5年生の秋、2学期の始まりと共に転入してきた。
オレは頭がおかしいかって?
そんなことはない。
足も生えてたし、しっかりと周りのみんなにも見えていた。
日本語をたくみに操やつり、
名前は「子虎」だった。
黒髪のキリストでもなければ、
黄色人種のお釈迦様でもなさそうだった。
なぜなら神様は色白で金髪、瞳は青かった。
木の又から生まれたわけでもなく、
処女のマリア様から生まれたわけでもなかった。
確実にロシア人の母ちゃんの腹から生まれてきていた。
でも確かにあいつのかあちゃんはマリア様ぐらい綺麗だった。
いや、マリア様より綺麗かもしれない。
少なくともモナリザが美しいという美的センスを持つヨーロッパの人種と
オレの美的センスは違うからわからないが。

でもはっきりオレは覚えている。
あいつは何度もオレの前で軌跡を起こした。

キリストは小さなかごから何百人という人間にパンを分け与えたという。

あいつはオレが階段でぶちまけてしまった
給食のカレーをあっという間に復元してクラス中に分け与えた。

キリストは大きな湖の端から端を静かに水面を揺らさずに渡ったという。

あいつは、夜中に学校のプールの忍び込んだとき、警備員の目を盗むため、
2分半水面を揺らさずに沈んでいた。

キリストは処刑された数日後、弟子達の前で蘇ったという。

あいつは、小学校6年の秋に転校してした数年後、オレの前に戻ってきた。