引き出しから小さな箱を取り出して蓋を開ける。

あの日和飛からもらった指輪。

左手の薬指にはめて、朝葉は家の階段を駆け下りた。



この気持ち伝えるんだ。

大好きって言いに行くんだ。



「お母さん、ちょっと出かけてくる!!」

キッチンで夕飯を作る母の背中に向かって、大きな声で呼びかけた。

その声に気付いた母が玄関に向かう朝葉を追いかけてくる。

玄関まで伝わってくる夕飯の匂い。

「朝葉、こんな時間にどこいくの?夕飯は?」

「すぐ戻るから!」

背中越しに会話をし、靴が履けると玄関を飛び出した。

気を付けて行きなさいよーと、閉まりかける玄関から母の声が聞こえた。