「らい…。大貴なんて大嫌いだよ!」


「利香姉!」


必死に謝り続ける大貴を残し、アタシは1人家に帰った。


殴った手も、エマに殴られた頬も、心も、全部痛かった。


その夜、アタシはサンドイッチを作らなかった。


アタシの代わりにエマが唯一作れるオムライス風おにぎりを大貴のために作ってあげていた。


アタシとエマは口を効かず、大貴は心を閉ざし、寿一は腫れ物に触れるようにアタシたちに接する。
異変を感じ取ってか、ピノコの機嫌が悪い。


この日から、アタシたち家族の歯車が少しずつ狂っていった。


賑やかで、騒がしく、だけどどこか暖かかった我が家…。


それが壊れようとしている。