「エマ、寿一、大貴、起きてー!」


ガンガンガン…。


色褪せたデニムのエプロンの紐をキュッと結び、アタシはフライパンをフライ返しで殴る。


「もう!うるさい!いい加減、その起こし方やめてよぉ!」


栗色の長い髪の毛をダルそうにかきあげながら起きてくる妹のエマ。
中学2年生。


「…。」


牛乳ビンの底みたいな分厚いメガネを装着し、無言のまま食卓へ座る弟の寿一(としかず)。
中学一年生。


「利香姉、おはよう。」


男の子なのに、まるで女の子みたいに可愛い顔した弟の大貴(だいき)
小学校3年生。


「ウァーン!マンマー!」

そして、寝室の奥で泣いている一番のチビが、妹のピノコ。
9ヶ月。


アタシ、名古屋利香は5人兄弟の長女。