彼の手がキライ



夜バイトしているコンビニの前を通り過ぎたところで、わたしは前にある広い背中に声をかけた。


広いけど、女のわたしより広いだけで、男にしては少し細い彼の肩。


歩いていた足の動きをとめて、振り返ってきた。


「いいんだよ、今日くらい大丈夫だろ?」


いくら行事がめんどくさいと言っても、やらなきゃいけない意識はある。


ある、けど……目の前にいる男、新井達也に“大丈夫”と言われると“まぁ、いいか”って思ってしまうんだよね。


「もう少しで、父親が働いているところに着くから」