彼の手がキライ



外を見つめていた瞳がわたしを映す。


タツと目が合うとドキッとする、引き込まれる。


「だよな、俺もそう思う」


記憶ひとつでたくさんの人を巻き込む、記憶ひとつでたくさんの人が悲しむ、喜ぶ。


記憶って、すごく大事なもの。


ホッとした表情を見せたあと、また彼の視線は外の景色に移る。


すごい速さで流れていた外の景色が徐々に目で追いつく速さになる。


景色の動きが止まると、プシューと音を立ててドアが開く。


「よし、美羽行くか」


タツに手を引かれて電車を降りた。