彼の手がキライ



つり革に捕まって、タツはずっと外を見つめている。


遠くをボーッと見るような、そんな目で。


そこ言葉を言った希莉くんの表情を思い出している、そんな表情で。


「美羽はさ、どう思う?莱が矢沢の記憶取り戻したら希莉は捨てられると思う?」


両手でつり革を持ち、軽くぶら下がるようにして下を見たままタツが言った。


記憶を取り戻したら?


そりゃ、優羽くんのこと思い出したら優羽くんを好きだったこと思い出すだろうけど…。


「それで希莉くんと別れるなんでことないと思う」