彼の手がキライ



「そんなの悪いよ!」


とっさに声が出た。


「遠慮するなって」

「遠慮するに決まってるじゃん!こうやって今施術してもらってるのに、さらに交通費を出してもらうなんて…」


なんでタツはここまでわたしに構って、助けようとしてくれるのか分からない。


「ねぇ、なんでタツは彼女がいるのにわたしと一緒にいるの?彼女怒らないの?」



タツはふうっとため息をついて、わたしの腕を引いて、ベッドに座らせた。


「彼女はいないよ。いたらこんなことしない」


わたしの隣にタツが座る。


「莱のこと引きずってるって思われたくなかったから、とっさに嘘ついた」


わたしの方を見ずに、床に視線を落として、両手を身体の後ろで八の字にしてる。


「美羽に構うのは、美羽が矢沢の幼なじみで、矢沢のこと引きずってるから。莱のこと、心のどこかで引きずってる俺と被ったんだ」


グサリと言葉が胸に響く。


優羽くんの名前が出たから。


そして莱ちゃんの名前が出たから。